前職の顧客に営業してよいか — 競業避止と営業秘密の線引き
約 1 分で読めます
独立して最初に頼るのは前職の人脈です。ただし顧客名簿の持ち出しと、記憶にある人に連絡することは法的にまったく違います。
原則は「営業の自由」
退職後に同じ業界で事業を営むこと自体は、憲法上の職業選択の自由として保障されています。前職の顧客に営業すること自体が直ちに違法になるわけではありません。
問題になるのは、①競業避止義務の契約がある場合と、②営業秘密を使った場合です。
競業避止義務はどこまで有効か
就業規則や退職時の誓約書に「退職後○年間は同業他社への就職・同種事業を行わない」と書かれていることがあります。ただし、広すぎる制限は公序良俗違反として無効とされることがあります。裁判例では、次のような点が総合的に判断されます。
- 守るべき企業の利益が実際にあるか
- 制限の期間(一般に1年程度までは有効とされやすい)
- 地域の範囲
- 制限される職種の範囲
- 代償措置があるか(在職中の手当や退職金の上乗せ)
代償措置が一切ないのに広範な制限を課す条項は、効力が否定される可能性があります。とはいえ争いになること自体が創業期には大きな負担です。署名した書面は必ず手元に残し、内容を確認してください。
営業秘密は明確にアウト
不正競争防止法上の営業秘密(秘密として管理され、有用で、非公知の情報)を持ち出して使うと、差止請求・損害賠償の対象になり、刑事罰の可能性もあります。
- アウト … 顧客名簿、価格表、仕入先リスト、見積の原価データを複製・持ち出して使う
- 問題になりにくい … 自分の記憶にある知人に、一般的な挨拶として独立を知らせる
境界は「データを持ち出したか」にあります。退職前にファイルを個人メールへ送る、USBにコピーする、といった行為はログが残り、後から必ず問題になります。
安全に人脈を使う
- 退職の挨拶は、在職中に会社の了解を得た範囲で行う
- 独立の連絡は、自分で名刺交換した相手に、記憶と公開情報の範囲で
- 前職と競合しない領域から始める、または前職の下請けとして関係を作る
- 心配なら、独立前に弁護士に誓約書を見てもらう(30分の相談で済むことが多い)
無料
会社をつくった人に、最初に届く 1 冊
決算の進め方、PL のつくり方、創業時にやったほうがよい 10 のこと。 設立から 1 か月以内の方へ毎月お届けします。購読は無料で、 あわせてテンプレートの配布と無料ウェビナーもご利用いただけます。
