見積書と提案書の型 — 値引き交渉に持ち込まれない作り方
一式いくら、で出すと総額だけで判断されます。内訳の見せ方、松竹梅の作り方、有効期限の入れ方まで、受注率を上げる実務をまとめました。
「一式」は値引き交渉を呼ぶ
見積書に「システム開発一式 300 万円」とだけ書くと、相手は総額だけを見ます。何にいくらかかっているか分からないので、判断材料は「高い / 安い」しかありません。結果、値引き交渉になります。
内訳を分けると、議論が「何を削るか」に変わります。これは値引きではなく、スコープの調整です。売り手にとっても、削った分だけ作業も減るので損になりません。
内訳の分け方
- 工程ごと(要件定義 / 設計 / 実装 / テスト / 導入支援)
- 機能ごと(必須機能 / あると良い機能)
- 初期費用と月額費用を分ける
さらに、「今回のお見積りに含まないもの」を明記します。追加費用をめぐるトラブルは、ほとんどがこの記載漏れから起きます。
3 案(松竹梅)を出す
1 案だけ出すと、相手の選択肢は「やる / やらない」の二択になります。3 案出すと「どれにするか」に変わります。
- 松 … フル構成。予算が取れるなら最も成果が出る
- 竹 … 本命。ここに誘導する
- 梅 … 最小構成。予算の制約が強い場合の受け皿
梅があることで、予算が合わない場合でも失注ではなく小さく始められます。小さく始めて成果を出し、次に拡大するのは、実績のない創業期には特に有効な入り方です。
見積書に必ず入れる項目
- 有効期限 … 「発行日より 1 か月」。半年後に同じ金額で出してこいと言われるのを防ぎます
- 納期の前提 … 「ご発注後〇営業日」。相手の作業(資料提供、確認)の前提も書く
- 支払条件 … 着手金の有無、締め支払いサイト。創業期は着手金を取れるかが資金繰りを左右します
- 含まないもの … 別途費用になる範囲
- 前提条件 … 想定している数量、回数、規模
提案書は「相手の言葉」で書く
提案書の冒頭は、自社の紹介ではなく相手の課題の要約から始めます。しかも、ヒアリングで相手が使った言葉をそのまま使います。
「業務効率化」ではなく「毎月末の 3 日間、全員が残業して集計している状態」。相手が自分の言葉を見つけると、「この会社は分かっている」と感じます。ここで信用が生まれ、その後の提案が通りやすくなります。
値引きを求められたときの対応
安易に応じると、最初の価格が不当だったと認めることになります。次回以降もその価格が基準になります。対応の選択肢は次のとおりです。
- スコープを減らす … 「この機能を次期に回せば、この金額になります」
- 条件と交換する … 「一括前払いであれば」「事例として公開させていただけるなら」「年間契約であれば」
- 断る … 採算が合わない仕事は、受けるほど苦しくなります
創業期は 1 件が惜しくて値引きしがちですが、安い価格で受けた顧客は、その価格を前提に紹介を回します。最初の価格設定は、後の顧客層を決めます。
会社をつくった人に、最初に届く 1 冊
決算の進め方、PL のつくり方、創業時にやったほうがよい 10 のこと。 設立から 1 か月以内の方へ毎月お届けします。購読は無料で、 あわせてテンプレートの配布と無料ウェビナーもご利用いただけます。
